試験の傾向
それでは最近の一級建築士の試験の傾向はどうなっているでしょう。まず、学科の試験の方は、重要な項目は毎年でています。
しかし、毎年問題の構成や内容は異なっているので、なかなか傾向と言っても難しいです。過去問10年みても、同じような問題がほとんど出ておらず、広範な知識が必要となります。
設計製図の試験の最近の傾向としては、複合施設の問題が増加しているという事でしょう。
図書館×コニュニティ施設や、幼稚園×福祉施設、郷土資料館×地域図書館といった問題が近年も立て続けに出ました。
こういった問題が出る背景には、社会情勢的な問題と建築物が密に結びついているという事が言えます。
設計のセンス、基本的な能力、移り変わる社会に適応する能力、様々なものが求められている傾向と言えます。
一級建築士になると
試験に合格し、一級建築士になると複雑・高度な技術を要する建築物を含むすべての施設の設計および工事監理を行うことができます。
まず学校・病院・劇場・映画館・公会堂・集会場・百貨店の用途に供する建築物で、延べ面積が500平方Mを超えるもの設計ができます。
また木造建築物または建築の部分で、高さが13Mまたは軒の高さが9Mを超えるものもできるようになります。
そして、鉄筋コンクリート造、鉄骨造、石造、れん瓦造、コンクリートブロック造もしくは無筋コンクリート造の建築物または建築の部分で、延べ面積が300平方M、高さが13M、または軒の高さが9Mを超えるものの設計ができます。
延べ面積が1000平方Mを超え且つ階数が二階以上のものも一級建築士になると設計や工事監理ができるようになります。
以上のようなありとあらゆる建物を一級建築士になると設計できるようになるのです。
転職に有利な資格
一級建築士になると転職に有利になると言われています。なぜなら、企業にとっても設計に携わるスペシャリストとしての評価はもちろん、会社の格付けに関わる経営事項審査のうえでも大きな評点を受けられるため、あらゆる企業が求めています。
また、団塊の世代が大量に定年を迎えることもあり、一級建築士の需要は一気に高まっているのが現状です。
あらゆる求人サイトや雑誌でも「一級建築士資格者・優遇、歓迎」などと言った文字を多く見にすることができます。
新建築士法とは
平成18年12月20日に公布された「建築士法等の一部を改正する法律」によって従来の建築士制度が大幅改正されました。ここでは大まかなポイントを押さえておきましょう。
設計・工事監理業務の適正化と消費者への情報開示
ここで変わったのが、建築士事務所を管理する管理建築士となるために、建築士として3年間の実務経験を積んだ後、管理建築士講習を受講・修了しなければならないという事です
つまり管理建築士となる実務経験と講習の受講を新たに定めた事になります。次に設計・工事監理契約の際の重要事項の説明を義務付けたことも大事な情報開示の観点です。
建築士の資質・能力の向上
ここで変わったのが、建築士試験の受験資格要件の見直しで、学歴要件が「所定の学科卒業」から「国土交通大臣が指定する建築に関する科目を修めて卒業」へ変更となりました。また高度な専門能力を持つ建築士として、構造設計(設備設計)一級建築士を定められたのもこの項目になります。
建築士の今後の課題
建築士の今後の課題として1つ挙げられるのは、日本の少子高齢化に対応する建築物の設計です。
日本には至るところに高層のマンションを建ててきましたが、果たして、それで今後の日本の住居が賄えるでしょうか。
高齢者同士でも過ごせるような住居作り、2世帯・3世帯でも快適な住まいづくり、そういった住居の構築が必ず必要になります。
地域のコミュニティーがあまり活かされていない今日の日本にあって、今の時代に合った建築物を設計していくという事は、社会的に見ても重要課題と言えるでしょう。